帰依者の涙を拭うサイ
これはブリンダーヴァンのバジャングループのメンバーの方のお話です。
スワミが肉体をお持ちだった当時、バジャンのリードシンガーはスワミご自身から選ばれなくては、どんなに歌がうまくてもマンディールで歌うことは出来ませんでした。
彼はスワミの祝福により、幸運にもバジャングループに入り、リードすることを許されました。しかし時間が経つにつれて、自分の中に傲慢さが生まれてきました。
彼はあまりにも傲慢になってしまったので、もう練習も、音合わせもせず、どのバジャンを歌うということさえも事前に選ばなくていい、と思うほどになっていました。
ある時、ブリンダーヴァンでバジャンが行われている時、ハーモニウム奏者に
『今日は何を歌いますか?』
と聞かれました。バジャンは事前に決めておいてシンガーも楽器もよく練習しなければなりません。しかし、彼は
『そのうちに決めるよ』
と言って事前に伝えませんでした。自分はなんでも上手に歌えるし慣れているから、直前に浮かんだ曲を歌おうと思ったのかもしれません。
彼は自分の順番が迫って来ているのに、自分の歌うバジャンの曲名を言わないので、ハーモニウム奏者はだんだん緊張して青くなってきました。ようやく彼は自分の歌う番のひとつ前に、小さなメモ用紙に “Om Nama Shivaya” と書いてハーモニウム奏者に渡しました。
それを見てハーモニウム奏者はますます青くなりました。“Om Nama Shivaya” から始まるバジャンはたくさんあるので、どの “Om Nama Shivaya“ か分かりません。ハーモニウム奏者は仕方なく適当に音を出しました。
しかしその音は、この歌には高すぎる音でした。彼はその音で歌い始めましたが、高すぎて声がきれいに出ず、大失敗をしてしまいました。
スワミはびっくりして彼をご覧になっていましたが、その後、彼はあまりにも申し訳なくて、走って自分の部屋に帰り、泣きました。
『ああ!もう僕は二度とスワミの御前で歌うことは出来ないだろう。。ああ、僕が傲慢な気持ちにさえならなければ。。。スワミ、ごめんなさい』
そして、木曜日になり定例のバジャンの時間になりましたが、彼は仕事場にいたまま、バジャンに行きませんでした。
『ああ、今バジャンが始まった時間だ。バジャンが恋しいです。。スワミ。。。』
彼はバジャンが恋しくてずっと泣いていました。
しかしその夜、バジャングループの一人から電話がかかってきて、このように言いました。『どうしてバジャンに来なかったんだい?スワミに “あの子はどうしたんだい?“ と尋ねられたよ。“あの子、あのメガネの子はどうした?” と尋ねられたよ“
『メガネをかけた人なんて何人でもいるから、それは僕のことじゃないよ。そんな、スワミが傲慢になってバジャンに失敗した僕を探すなんてありえないよ』
日曜日になりましたが、彼はまたバジャンに行きませんでした。再びスワミは、“あの子はどうした。何で来ないんだ?“と友人に聞きました。友人は、“スワミ、彼はもう歌うことは出来ないと言っています。”と言いました。
それを聞いてスワミはこのように言いました。
“STUPID! 愚か者だ。”
それを聞いた彼は
『そうだよ。その通りだよ。僕は愚か者だ』
と言ってバジャンに行こうとしませんでした。
木曜日になりました。
今度は、バジャングループの友人が直接やってきて、“スワミがあなたを呼んでいる。絶対来なくちゃだめだ” と彼を呼びに来ました。
『そんな馬鹿な、何かの間違いだよ』
" いや、間違いではないよ。スワミはあなたのことを呼んでいる'' と言って友人は彼を無理やりバジャンに連れて行きました。
そして、彼はスワミのいらっしゃるステージの最前列に座らされ、歌わされました。
慈悲深い母なるスワミは、立ってずっとそこを動かず、甘い微笑みを湛えて、彼のバジャンを聞いて下さいました。
母なる神様、あなたは帰依者の涙を拭います。
もう二度とわたしのエゴというコブラが鎌首を持上げませんように。
神は帰依者が心から悔い改め、正しい道を歩む決意をしたなら、大きな慈愛でわたしたちを導いてくださいます。